プロフェッショナル仕事の流儀 (大規模集約林業の果てに③)
昨日、NHKの番組「プロフェッショナル仕事の流儀」を見ました。京都の日吉町森林組合の湯浅さんの特集です。まじめで素晴らしい方でしたが、正直どこがすごいのか、とまどいました。実施していることは、当たり前のことのように感じました。正直、土佐の森・救援隊の方が工夫していることの方が多いのでは感じました。さらにこの事例は集約林業の延長線上にあります。映像から危うさを相当感じました。それに日吉町の森はかなりいい立地(かなり傾斜の緩い立地で搬出がしやすい)と言えるように感じました。
全国の森林組合という限られた組織の中では、素晴らしい取り組みで賞賛されるべき事例だと思いますが、森づくりという観点では、まだまだひよっこと言う感じを受けました。
しかしそんな方々とレベルの違う森づくりを実施している方々がいるのです。それがこの方々の森です。集約林業と対角にある森づくりをしている方々です。「自伐林家」なのです。
自伐林家(自らの山を自ら整備・搬出する方々)は少なくなったがまだ地域に残っている。これらの方々の山を拝見すると、素晴らしく“いい山”をつくっている場合が多い。ここで言う「いい山」というのは多面的機能(水源涵養、生物多様性、災害防止、地球温暖化防止、レクリエーション等の機能)を十分発揮する森、かつ経済性もいい山ということ。15~20年に一度、森林組合等に依頼する委託施業よりはるかに「いい山」になっているのだ。これは自らの山であるため愛情がこもり、さらに頻繁に山に入り整備すること、毎年継続して収入を得ようとするため自然に長伐期施業化すること等により、「施業」というよりは「森づくり」業を展開するからだと考えられる。経済的には皆小規模なため低投資、搬出手法もシンプルでランニングコストも少なくてすむ故に、不況下でも柔軟に対処できているのだ。林業自体を副業でおこなっている場合も多く、また林業とは別の副業をもっていたり、林間にて農業を副業としておこなっている場合も多い。これらの方々は林業施業というよりは「森業」を展開しているのである。
このように自伐林家の森は、日吉町森林組合の森どころではないのである。
NHKの番組自体が日本の林業自体を知らないのだろう。この程度の森づくりを「仕事の流儀」としてもらっては困るのである。
ただ、大規模集約林業と比較すれば日吉町事例が、素晴らしく思えるのはいたしかたないことなのだが。