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大規模集約林業の果てに ①

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集約林業の施業現場
「大規模集約林業」
バブル全盛の時代に使われた「大量生産・大量消費」、今や過去の言葉になった感のある4文字熟語であるが、それを想起させる単語である。しかし林業界ではこの単語、未だに生きている単語なのだ。行政(林野庁や県)はこれに頼り切り、富士通総研の梶山氏は「これしかない」と言い、環境保全家の天野氏は「救世主」と言う。「行け行けどんどん」的な集約林業、ん~この時代、かなり違和感を感じるのは私だけではないはず。なぜ長い期間不況のまま置き去りにされた業界なのかが、何となくわかると思われるがいかが。

 現在国や県は大規模な製材工場(合板及び集成材)を核として、山林を大規模に集約し、森林組合等の大規模施業者に委託し、数千万/台の高性能林業機械を導入し、生産性を高めることにより材の安定供給を目指し、大規模製材工場の期待に応える仕組みを建設中である。
さてこれが進むとどうなるのか。まず大規模な製材工場は地域の小規模な製材工場を駆逐していく。県も木材協会もわかっていて進めているのだ。儲からない小規模製材工場は潰せということか。次に材の安定供給のために森林組合等の素材生産業者は大規模製材工場と直接取引を始める。そうすると地域の原木市場が徐々に潰れていくであろう。森林組合は施業プランナーと称する人材を養成し、山林の集約化を進めるが、先に行けば行くほどこの集約化は難しくなる。もうすでにそうなっているところもあると聞く。

 製材工場は大量材の安定供給を求める。森林組合はまだしも民間企業は安易に皆伐に走るであろう。森林組合は大規模施業するために現在必死に高性能林業機械を買いまくっている。高知県は木材の生産量は10位にも入ってないが、高性能林業機械の保有台数は3番目で熊本や大分よりも多い全国3位。近畿全県よりも多く持っている。これだけ保有しているということは減価償却費やランニングコストが相当負担になっていることが予想できる。現在でもさらに増やそうとしていると聞く。そうなると施業単位にかなりの収入をあげないといけなくなる。とどうするか、お金になる木から伐って搬出する。曲がり材より直材を伐って出す。施業に必要な作業道の開設費を抑えようとする。ざっとした施業期間中しかもたないものを造る。施業後の大雨で崩壊するようなものを。要するにこういう施業(集約施業)は、施業時の採算性が中心で、残った森のことは二の次なのである。森づくりとはまったく異質な「委託施業」なのである。ある業者は施業後至る所で崩壊した作業道を批判されて「自然に帰る施業のやり方をしただけだ」と豪語したそうだ。これが集約林業の実態ということか。

この点をよくよく理解することである。
 
続く

p.s. 高性能林業機械保有台数
 1位:北海道(462台)
 2位:宮崎(218台)
 3位:高知(185台)
 4位:熊本(168台)
 5位:岩手(143台)

素材生産量ではほぼ高知と同規模の鹿児島は76台である
by ken_nakaji | 2009-02-03 21:42 | 森林
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