現行林業と自伐型林業の比較Part-4

現行林業と自伐型林業の比較Part-4です。
 現行林業(委託・請負型)の林業経営の方向性は「所有と経営の分離」が基本です。行政は所有と経営の分離政策と言っているようです。この理論は本来、企業における株主と経営の分離です。これを強引に林業に持ち込み、山林所有者を経営から分離させることが正しいかどうかということです。山林所有者=投資家と言うことなのでしょうか。
 それはともかく、分離された状態で山林所有者が毎年林業により収入を得ようとすると、古い林業家からはよく聞きましたが毎年約20ha程度皆伐を委託し実施するという手法となります。現在だと約50万円が山林所有者の収入となるため年間1千万円の収入となります。経費も多少かかるでしょうからこの程度は必要となるでしょう。そうすると50年で回すとすると1千ha以上所有していないとできません。以前はよく「千ha以下の所有者は林業経営者にあらず」と言われたのはこのことですね。森林・林業再生プランの集約化の議論でも常に千ha以上必要とよく言っていましたね。つまり千ha以下の所有者は毎年一定以上の収入を得ることは厳しくなります。100ha以下や数haとなると、数十年に1回の収入となります。小さければ小さいほど不利になります。故にこの所有と経営が分離された林業の世界では、小さい山林所有者ほど意欲が無くなってくることは必然です。林業白書では常に「小規模山林所有者に意欲がない」と批判していますが、日本の大半を占める小規模山林所有者の極端な意識低下は林業政策がそうさせていることを知るべきです。
 次に森林経営についてですが、山林所有者は経営から分離され実質的森林経営を放棄していますが、では請負事業体が森林経営しているかと言うことです。現状、森林組合や素材生産業者が何を請負、何を実施しているかと言うと伐採と搬出です。つまり素材生産です。素材生産業の企業経営をおこなっているということです。これは森林経営ではありません。森林組合が管轄するエリアの森林は広大です。素材生産業者は広域に山を転々とします。これで森林単位の森林経営など不可能です。全国で森林組合がきちんとした森林経営をおこなっている事例など見たことありません。山林所有者も請負う事業体も森林経営をおこなっていないということは、日本から森林経営が消滅したということです。正直、きちんとした森林経営を実施している人は、私の目から見て自伐林家の一部に残っているのみです。この森林経営の消滅はこの所有と経営の分離政策の最大の問題点です。さらに残念なのは行政や林業関係者が、素材生産業の企業経営を森林経営だと勘違いしている点です。林業界のほとんどの人がそう捉えているとしか思えません。これも大問題です。この程度のことがわからないとなると林業学が劣化しているとしか言えません。
 故に所有と経営の分離政策は、日本林業の根幹を揺るがす問題点を孕んでいます。衰退産業化、「林業は儲からない」の根本問題は「所有と経営の分離」が引き起こしているのです。この手法を何と日本林業は半世紀も継続しているのです。皆おかしくなっているとしか言えませんね。
 1人の森林経営者が森林の情報や地形を熟知して持続的森林経営を実施する場合、適切な面積は30~200haだと考えています。日本において本当のプロと言える森林経営者は100ha前後を所有し、きちんと自伐している一部の林家や自伐化した大山林所有者にのみ本格的で持続可能な森林経営が残っています。所有と経営を分離した手法が大前提の現行制度のフォレスターや森林施業プランナーなど、この自伐林家たちからすると全くのど素人といえるでしょう。

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by ken_nakaji | 2015-12-07 14:23 | 森林 | Comments(0)
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