集約林業の問題点

e0002820_2339403.jpg
      (放置され雨ざらしになっている高性能林業機械): この詳細はこちら

■集約林業の問題点
1.所有と施業の分離
・間伐施業における山林所有者の収入はほとんどないことを意味する。収入があるのは施業する業者のみ。山林所有者の財産を施業者が奪う仕組みと言える。
・要するに山林所有者の施業権を奪うことになる。集約される山林の中に、意欲があり自ら施業したい方がいても認められず、泣き寝入りせざるを得ない事例も出てきている。
・施業者にとって山は、他人の山であるため、山や木の扱いが雑になる根本原因がここでつくられてしまう。
2.作業工程の増加
・自伐林業の場合施業するという1工程しかないが、集約林業の場合
①集約する:山林所有者を訪問し、説得し、説明会を開く。これを何回も繰り返す。という大きな工程が追加される
②山林所有者が施業者へ委託する
③施業する:間伐・搬出・販売
④検査する
という4工程に分かれる。
・材価が安い中、これだけの工程増になるということは極端に採算性を悪化させる。山林所有者、集約者、施業者という3者で材の売り上げを分け合う形となる。これで採算など合うわけがない。特に集約化には数年かかる場合もあり、相当な人件費がかかる。実際に山林所有者の集約化という作業は、現在公共事業化し税金にて実施されている。自伐林業にはこういう工程は全く無用。あえて集約化すると言うことは、まさしく税金の無駄遣いである。森林・林業再生プランではこの作業を各県の職員(林業普及職員)にやらせようとしている。全く無駄遣いであると言える。

3.施業コスト(採算性)
・森林・林業再生プランでは集約する山の面積を最低100haとしている。これぐらいないと大規模に効率的に出来ないということのようだ。ここに高性能林業機械を導入して生産性最重要視の施業をおこなうと。1施業現場に必要な高性能林業機械は、スイングヤーダー等の集材機、ハーベスターやプロセッサーの造材機、グラップル(材つかみ機)、フォワーダー(材運搬機)、それに作業道敷設のユンボーが必要となり、約1億以上の投資となる。この機械を操作するために1現場に4人程度の現場作業員を専業雇用し張り付けないといけなくなる。機械の償却費、4人の人件費、ハードな使用となるためメンテナンス費も高価になる。またこの機械類が動くに従い200㍑/日前後の燃料(軽油)が使用される。凄まじいコストである。
・このコストを補うため現在実施されていること、これから実施されると思われることが以下のとおりである
①採算を合わせるために既にかなりの現場で実施されており問題化している点を挙げる
●お金になる良質木から伐る(太い木、真っ直ぐな木)。本来の間伐の主旨から逸脱する。特に「儲かる林業」「山林所有者への還元」などと都合のいいことを言っている現場ほどこうなっている傾向が強い。これは山林所有者への冒涜であり、残った山の価値も落としている。
●生産性を上げるために作業スピードを上げる。これは残存木への損傷率が極端に高まる。また作業員の安全面が極端に落ちる。一人一日10m3というようなノルマが作業員に課せられ、現場作業はハードになり、労働時間も長くなる。この労働条件の厳しさに耐えられず辞めていく者が多くなる。
●短期間での施業に必要な道づくりになるため、山の状況に合わせた道ではなく、作業しやすい道、安価な道が入ることになり。山を壊したりするような雑な道づくりがおこなわれている。
②経費節減のために今後実施されるであろう点
●高性能林業機械を使うことが大前提となるため、これにかかる経費を節減することは難しくなる。そうすると船舶業や漁業、第2次産業の工場がそうしてきたように、人件費の削減に踏み込む。そうなると施業現場作業員が一気に外国人労働者に変わると考えられる。特に高性能林業機械を扱う現場は単純労働や3K扱いされやすく、一穴が開くと一気に進むだろう。日本人雇用を謳っている森林・林業再生プランであるが、全く本末転倒の結果になる可能性が高いのである。既にそうなっているところが出始めていると聞く。

4.需要と供給のバランス
・集約林業は山側から如何にたくさん集材し、如何にたくさん市場へ供給するかばかり考えているため、需給バランスの視点がない。2年前のリーマンショックにてそれが証明されている。リーマンショック時住宅需要が減り、製材所等が材は必要ないと言っているのだが、材供給側の集約林業は材供給を調整することができず(施業契約や補助金、専業雇用等により)に、供給し続けたため市場で材がだぶつき、当時底値だと思われていた材価がそこからさらに40%近く下がるという末期的現象が起きた。これは集約林業に供給調整ができないことを証明して見せたのである。森林・林業再生プランではさらに倍をかけて集約林業を推進している。この傾向はさらに強まるのである。これは市場破壊を招きかねないのである。実に危うい施策と言えるし、リーマンショックの学習がされていない。

5.森林や環境へ負荷
・生産性重視なため、材の収穫だけに意識がいき、「森づくり」という視点は置き去られ無茶な伐採、無茶な道づくりが横行している。これは先にも述べたように既に問題化している。過度の伐り過ぎ(強度間伐し過ぎ)により、風倒木が発生し、それによる山の表層崩壊が起きることも発生している。
・環境負荷の面でも、高性能機械が使用する燃料は大量となり、Co2を大量に吐き出しながら材の収穫が実施されているのである。

6.森林の活用手法
・建築用材の収穫工場としか利用しないのが集約林業である。自伐林業の場合、燃料材、椎茸栽培、きのこ、山菜、森林ツーリズム等いろんな利用をおこない収入化している。集約林業は単一活用だが、自伐林業は多目的活用となる。

7.その他
・集約林業の産みの親であるK氏は林野庁の過去の施策である「新生産システム」の中心コンサルタントであったと聞く。この新生産システム、四国では2事業取り組まれたが、片方は中心事業体がこの事業展開により倒産。もう一つは形にならずに消えていったという状況。新生産システムも集約林業をベースに構築されたもの、彼が中心になり失敗事例ばかりの新生産システムの延長線上に組まれた「森林・林業再生プラン」。これが成功するわけがないと思うのだが。
・また集約林業のモデルになっている森林組合では上記述べた問題点が噴出しているようだ。この問題噴出事業をモデルにしてどうするというのか。
[PR]
by ken_nakaji | 2011-01-15 23:40 | 森林 | Comments(0)
←menu